商品を企画する時に最優先したいたった1つのポイントとは?

この記事では、商品やサービスを企画する際に最優先したいポイントを哲学的な見地から解説します。
商品やサービスを販売する方にとって役に立つ販売方法についても解説します。

なぜ、商品が売れないのか?

まず根本的な原因として、『なぜ商品が売れないのか?』を考えてみます。
「現在は、不景気だから」と言ってしまえば簡単ですが、問題はもっと根本的なところにあります。

生活必需品が足りないということがない

現代は物が余っている時代で、少なくとも日常生活を送る上で、生活必需品が足りないということはありません。
でも、例えば戦後すぐの頃であれば、状況が違います。
戦後すぐの頃というのは、辺り一面が焼け野原で、物がない時代でした。
この場合の『物』というのは、もちろん生活必需品のことです。
『物』がない時に生活必需品を売れば、これは飛ぶように売れます。
しかし、現在は逆に『物』が余っている状況ですので、生活必需品を売ろうとしてもあまり売れません。

 

そもそも、現代人は何を目的として物を買うのか?

現代人が、洋服、車、ブランド品などを買う場合について考えてみます。
洋服にしても、車にしても、ブランド品にしても、現代人はそれが必要だから買っているというよりは、他人と差別化するためとか、自分が属している層やグループ(例えば富裕層であったり、○○のファンなど)をアピールするために買っています。
20世紀後半に活躍したフランスの思想家ジャン・ボードリヤールは、彼の著書である『消費社会の神話と構造』の中で、次のように指摘しています。
人々は、決してモノ自体を消費することはない。
理想的な準拠として捉えられた自己の集団への所属を示すために、あるいはより高い地位の集団を目指して自己の集団を抜け出すために、人々は自分を他者と区別する記号としてモノを常に操作している。
ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造
少し難しいので、これを私なりに簡単に説明すると、以下のようになるかと思います。
人々は、決してモノを道具として使うためだけに買うことはない。
自分が理想としている集団に所属していることを示すために、あるいはより高い地位の集団を目指して現在自分が所属している集団から抜け出すために、人々は自分と他者とを区別するための記号としてモノを常に扱っている。

必要性よりも記号の方が重要になる

物がない時代であれば、生活必需品に対する需要が最も大きい。
しかし、経済が成熟していくにつれて、その商品やサービスの必要性よりも、記号の方が重要になります。
このような時に、商品やサービスの必要性ばかりを訴えても売れるはずがありません。

記号の価値を増やせば売れる!

例えば、スーパーの実演販売でハンドクリームを売っているとしましょう。
この場合、商品の良さ(必要性)を単に説明するよりも、「○○さん(有名人)も使ってます!」という風に説明を変えたほうが売れ行きも良くなります。
「○○さん(有名人)も使っています!」と言えば売れるのは、商品の『記号』としての価値が増加するからです。

お客様の声を聞くのは、本当に有効か?

むしろ、こちらから提案する

これまで見てきたように、経済が成熟していくにつれて、その商品やサービスの必要性よりも記号の方が重要になります。
この場合の記号というのは、『ファッション』と言い換えても良いかもしれません。
そして、このような中にあっては、「何がかっこいいと思いますか?」とお客に聞くよりも、「これがかっこいい記号(=ファッション)です!」と、こちらから押し出す姿勢が重要になります。

待っているだけではダメ!

現在は、変化のスピードが速い時代です。
待っているのではなく、先手先手で提案しないといけません。
以下に、アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズの言葉を引用します。
ただお客さんの望みを聞いて、それを与えようとしてはいけない。
望み通りのものを作る頃には、お客さんは別の新しいものを欲しがるだろう。
 スティーブ・ジョブズ

ユニクロの戦略

先日、某紳士服の会社の店長さんと話をする機会がありました。
その店長さんがユニクロの話をしていたんですが、その店長さんは、「ユニクロはファッションショーなどを開催していて、今やファッションとして定着している」と言っていました。
 昔はユニクロといえば、『服や下着を安く売る店』という認識だったと思います。
つまり、当時のユニクロは商品の記号(=ファッション性)ではなく、必要性にフォーカスした戦略を取っていたということです。
しかし、現在のユニクロはファッションショーまで開いて、「これがクールなファッションですよ!」と客に向けて提案しているわけです。

まとめ

ファッション業界じゃなくても、今後は記号(=ファッション性)がますます重要になります。
なぜなら、経済が成熟していくと記号社会にならざるを得ないからです。
商品やサービスを開発する際は、需要(必要性)があるかどうかばかりに目を向けるのではなく、独自の記号(=ファッション性)を作り出して、それをお客に提案していく姿勢が、今後はますます重要になると思われます。

 

今日の一冊

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

ビジネスをする上で、なぜ美意識を鍛えることが重要なのかを解説している。
直感を生かした超論理的な決断を下すには、美意識を鍛えることが不可欠だと説いている。
また、変化の激しい現代においては法律が変化に追いついていない場合も多く、そのような時に最近多く見られる『合法的だから OK』 という価値観ではなく、自分の美意識に基づいた独自の判断基準を持つことが、人類の致命的な誤りを防ぐためには重要であると本書では説かれている。
本書の中で、アドルフ・アイヒマンの裁判を例にして『悪』についての考察がなされている箇所があり、「悪とは、既存のシステムを無批判に受け入れることである」という文を読んだ時にはハッとさせられた。
また、それは哲学を学ぶことによって防ぐことができるともある。
個人的に非常に勉強になった一冊。
この著者の別の本も面白いので、ぜひ読んでみてほしい。
ちなみに今回の記事も、この本の一部を参考にして書いている。

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